副業元年2018年を振り返る
政府が2018年1月に副業・兼業を促進するガイドラインを策定したことを受け、2018年は副業元年だと言われるようになりました。そんな、2018年の動きを振り返ってみたいと思います。
1.副業解禁に向けた企業の動き
副業解禁を受けて、副業を認める企業が増えてきています。
ロート製薬は2016年2月には社員の副業解禁を打ち出しており、まさに、副業を認めている企業のトップランナーです。
ロートの副業は届出制で、希望する社員は副業で「何をするのか」「目的」「頻度」の3つを会社に提出し、上司と面談します。
基本、会社が可否を判断することはなく、情報漏えいなど就業規則で禁止されているケースに当たらないかどうかを判断しているそうです。
現在、同社では対象人員1200人のうち、70人が届出を行い、薬剤師の資格を活かして調剤薬局で働いたり、趣味を活かした副業を行っています。
その他、ソフトバンク、ユニチャーム、コニカミノルタ、DeNA、セガサミーも副業を認めており、カブドットコム証券、アプラスといった金融機関へも副業解禁の波が押し寄せています。
ソフトバンクでは全社員1万7000人を対象に副業を認め、100人がプログラミングやセミナー講師などの副業を持っています。
コニカミノルタは本業との相乗効果があるかどうかを見極めて、副業を容認するかを判断しています。約1ヶ月で3件承認し、2件は起業だそうです。
ユニチャームでは入社4年目以降の1,500人を対象に、就業時間外と休日に限った副業を認めています。副収入を得るためのアルバイトは禁止し、個人のスキルアップにつながる副業に限定しています。
セガサミーは勤続3年以上の正社員を対象に副業を解禁しました。個人事業主として働くことを想定しており、原則として他社との雇用契約や競合他社の業務に携わる事は認められていません。
2.副業に関する企業の意向
2018年9月独立行政法人労働政策研究・研修機構が「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」を実施しました。
この調査では、従業員の副業・兼業に関する企業の意向について尋ねており、「副業・兼業の許可する予定はない」が75.8%となっています。
副業・兼業に好意的な「副業・兼業を許可している」は11.2%で、「副業・兼業の許可を検討している」が8.4%となっており、両方合わせても19.6%にしかなりません。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(2018年9月)
やはり、副業解禁はまだまだ道半ばであると言えるでしょう。
では、何故、副業を許可しないのでしょうか?
その理由をみると、「過重労働となり、本業に支障をきたすため」が82.7%、次いで、「労働時間の管理・把握が困難になる」が45.3%となっています。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(2018年9月)
一方で、許可している企業の理由をみると、「従業員の収入増加につながるため」が53.6%、「従業員が活躍できる場を広げるため」が31.7%、「従業員のモチベーションの維持・向上につながるため」が31.4%となっています。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(2018年9月)
これをみると、従業員の収入や将来を考えて認めている企業がある一方で、認めない企業は本業に支障をきたすや管理の手間がかかるといった企業側の論理で認めていないことがわかります。
従来型の終身雇用を前提とした企業側の論理は、一体どこまで続くのでしょうか。
その企業内でしか活用できない知識やスキルばかり長けていき、外でも活躍できる能力(エンプロイアビリティ)を養成できない企業に未来はあるのでしょうか。
副業の解禁の実現には、まだまだ時間がかかりそうです。
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3.副業に関する労働者の意向
同じ調査で、労働者にも副業・兼業の意向を尋ねています。こちらによると、副業・兼業を「新しくはじめたい」が23.2%、「機会・時間を増やしたい」が13.8%となっており、副業・兼業に前向きな労働者が37%となっています。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(2018年9月)
一方、副業・兼業の「機会・時間を減らしたい」が1.3%、「するつもりはない」が56.1%となっており、副業・兼業に消極的な労働者が57.4%となっています。
企業に加え、労働者も副業には前向きな割合が低くなっています。
副業・兼業に前向きな理由をみると、「収入を増やしたいから」が85.1%、「自分が活躍できる場を広げたいから」が53.5%となっています。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(2018年9月)
一方、消極的な理由は、「過重労働になり、本業に支障をきたすため」が61.6%、「家族や友人と過ごす時間を重視するため」が56.5%、「勤め先企業で禁止されているから」が40.4%となっています。
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」(2018年9月)
労働者は働く総時間が増加することへの懸念が大きくなっています。
確かに私もブログの作成等の副業を行っていますが、正直、家に帰ってからの作業がしんどいことが多いです。
9時-18時で定時にあがれる会社でないと、就業時間外の副業は肉体的にも精神的にも難しいかもしれないですね。
個人的に思うのですが、この時間に縛られる働き方こそ改革すべきなのではないのでしょうか。
自分が果たすべき役割を就業時間内に終わればあとは何をやってもいいと思うのですが。。。
極論すれば、午前中に果たすべき仕事を終えられたら、午後は退社して副業をしても良いと思います。
働き方改革でも、時間ではなく成果で給与を支払うという議論になると、過重労働になる、残業代削減だ、などの批判が多く出ますが、その一方で、先ほど記載した例のように早く仕事を終えることもできるのです。
また、昨今のRPAやAIを活用して、もっと効率的に働けるはずです。そうすれば、労働者の就業時間は短縮できるはずです。
一面だけを見て議論をせずに、もっと大局的に議論を進めて判断して欲しいと思います。
4.今後の副業の進展に向けて
多くの企業や労働者が二の足を踏むのは、過重労働になるという点と労働基準法38条(労働時間通算)によるものだと考えています。
労働基準法38条の労働時間通算とは、異なる事業場での労働を行った場合、労働時間の通算し、時間外労働に該当するに至る場合は割増賃金を支払わなければならないというものです。
この通算は、異なる事業場の労働時間をどのように管理するかという大きな問題を抱えており、これが企業側が副業解禁に二の足を踏む理由の1つでもあると言えるのです。
先の副業解禁を認めているセガサミーは、個人事業主としての副業しか認めていないのは、この労働基準法38条に対応できないためだと思われます。
政府もこのことは懸念しており、厚生労働省で昨年から「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」が開催されており、対処策について検討をはじめています。
今後、どのように副業・兼業が推進されていくのか、注視していきたいと思います。
今年は皆さんと一緒に副業を推し進めていきたいと思います。皆様、どうぞ、よろしくお願いいたします。
今回も最後までお読みいただき、ありがとう御座いました。
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